サーチライトを眺めながら
「場違いー。」
ディズニーシーに着いた途端、Nさんはそう言って笑った。
私もそう思った。
Nさんも私も、ディズニーなんて柄じゃなかった。
1か月前。
会社の同僚の二次会で、Nさんは見事ディズニーシーペアチケットを当てた。
彼女のいないNさんは、彼女のいる後輩にチケットを譲ろうとして「さすがにそれは申し訳ないです。」と断られていた。
二次会の帰り際、新婚ほやほやの同僚はNさんと私に言った。
「一緒に行ってくればいいじゃん。」
同僚は、1年前に私がNさんに告白してフラれたことを知っていた。
Nさんはただ笑っていた。
二次会の次の日、私は髪を切りに行った。
合コンに行きまくり、ちょっといい感じの人ができたりもした1年だったのに、ディズニーシーに行けたらどんなにいいだろうと期待してしまった自分がイヤだった。
すっきりして帰宅し、Nさんからメールが入った。
なぜだかディズニーシーに行くことになった。
髪、切っちゃったじゃん、と一瞬思った。
朝イチの新幹線に乗り、ディズニーシーに辿り着いたのは開園直前だった。
一緒に順番待ちをし、一緒にアトラクションに乗り、一緒にごはんやおやつを食べた。
クリスマスを目前にした季節でとても寒かったけれど、私たちは常に一定の距離を保っていた。
帰りの新幹線に間に合わないからと、夜のパレードは途中までしか見られないことがわかっていた。
私は、人ごみの間から見えるパレードより、夜の空を走るサーチライトを眺めていた。
幾重ものサーチライトは、びゅんびゅん動きながら色を変えていた。
目が離せず、何てきれいなんだろうと思った。
好きな人のすぐ側で、こんなきれいなものが見られるなんて…と思った。
この先辛いことがあっても、がんばって生きていこう…と、今思うと笑っちゃうくらい暗い発想だけれどそう思った。
それくらい、幸せだった。
私たちは一定の距離を保ったまま、帰宅した。
別れ際、「じゃあ、また…」とNさんが言ったので、またデートができるのかと前のめりになったら、「また…会社で。」と言われズッコケそうになったことを今でも覚えている。