思い出の中

今もいつかは思い出の中。

24才最後の日の出来事

その日は24才最後の日だった。

25才を翌日に控えた私は、見事なまでにフリーだった。

彼氏どころか、気になる人すらいなかった。

 

たまたま地下鉄に乗っていたら、

何だかすごく雰囲気のいい人がいた。

彼は右手でつり革を握って立っていた。

かっこいいな、と思った。

いつもならそこでフェイドアウトしていくはずの気持ちが、

その日に限ってどんどん燃え上がっていった。

今日は24才最後の日だし、24才の恥はかき捨て、と思ったっていいんじゃないか。

そんな意味のわからない考えが湧き上がって消えなくなった。

私は財布の中に入っていたセブンイレブンのレシートに一言と電話番号を書き、

車内のほとんどの人が降りる駅で降りた彼を追った。

そして人が溢れる階段で彼がしょっていたリュックのポケットにレシートをポスティングした。

あっという間の出来事だった。

 

翌日、知らない電話番号から電話がかかってきた。

彼だった。

その時私は自分の部屋にいて、その日はとても蒸し暑くて…でもそんなことはどうでもいいくらい心臓がバクバク言った。

とりあえず会いましょう、ということになって、後日私たちは会った。

それから何度か会った。

 

あれから5年以上の月日が流れ、

今、彼がどこで何をしているのか知らない。

ただ、時々ふと思い出しては、元気でいてほしいなあ、と思ったりする。

ものすごく勝手に、ものすごく外野から、そんなことを思ったりする。